2-4 世界を組み替えるために選んだ道
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
…あたしにもそんな相手ができるのだろうか?
リアには想像もつかなかった。
調制士となることは名誉と同時に苦難の道を意味する。調制士は胞奇子の能力を測り、引き出し、一年という期間で最終試験を通過できるまでに育成する義務がある。観察者にして計画者、そして育成者でもある存在が調制士だった。しかも、相手は凶暴な魔族の中でも魔王を目指すほどの猛者だ。就任の後には全身全霊で当たるべき仕事が待っている。パートナー次第では生死を分かちかねない大事業だった。
そして、女性種が王選びに臨むためには調制士になるしか道はない。魔族は制度や役割を疎み、軽んじる性質がある一方で、既存の制度や枠組みに時として激烈に固執する。そうしなければ世界を維持できないと肌身で分かっているからだ。王選びの制度ができて以来、女性種の王が立ったことがないのがいい例だ。魔族とて矛盾は免れない存在だった。
まずはあたしが魔王の調制士になって、このくだらない決まり事を変えてやる。
女性種が王になれないことを知った時から胸に抱き続けてきた思いだ。
調制という重要な仕事を担う調制士は、魔王にとって欠くべからざる存在だった。その存在は魔王の施す政策にも影響を与える。配偶体を兼ねれば、影響はより強まる。魔王の調制士となることは、世界を組み替えるためにリアが取り得る唯一にして最善の道だった。
別に男の上に立ちたいとか、女性種は男性種より優れていると証明したいわけではない。ただ、性別という条件で当然のように選別の対象から排除されるのが気に食わないだけだ。
魔王に力が必要だというならなおさらだった。相転儀の優劣は性別では決まらない。それどころか、理屈に走りやすい男性種よりも感性を活かす女性種の方が相転儀においては優れているという説さえあるのだ。ならば、女性種が王の座を目指したからといって何の不都合があろう。リアにとっては迷いようのない考えだった。魔族という一個の存在として同列ならば挑戦の機会は与えられてしかるべきだ。結果として男性種が王になるならそれで良い。