2-2 やっと辿り着いた場所
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
胞奇子は調制士が血の盟約を結んだ相手だ。それは相手の力を認めたことを意味し、そんな相手と共通の目的を持って長期に渡って接していれば自ずと情も通い合う。間違いを起こそうと思わなくても起きようというものだった。
王選びの仕組みを考えたやつって、ホント趣味が悪いわ。
リアは小さく眉を歪めた。
王選びに参加した者の中には運命とも思える相手との巡り合いに溺れ、男女の情愛に耽り過ぎて脱落する者もいるそうだ。事前のレクチャーで聞いた話だった。
しかし、訓練室が調制士の部屋にあるのは仕方のない面もあった。訓練を施す側の調制士の部屋にあった方が何かと都合がいいのだ。調制士の移動の手間もなければ、相転儀の秘密を守るために気を使う必要もない。
訓練室の大半は相転儀による擬似空間で実際には存在しない。寝室ほどの大きさの部屋を訓練時には百倍に拡大して使用する。使用時には相転儀でフィールドを形成して現生空間とは切り離すため、音はもちろん相転儀による物理的な影響も訓練室以外には及ばない。
リアはアルの着替えを待つ間、ふと左の手の平を見つめた。儀式でアルのつけた傷は目立たなくなっていた。
…やっと、ここまで来た。
胸に感慨が湧いた。