1-21 リアの方がきれい
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアは黙って二人の後姿を見つめていた。悲しいような、悔しいような、怒りたいような、複雑で重たい気分を持て余した。
「…行きましょ、アル」
いつまでも立ち尽くしていても仕方がないのでアルに声をかけた。返事も待たずに宿泊棟に向けて歩き出す。追ってきたアルが横に並んだ。
「…きれいな人だったけど、リアの知り合い?」
「…そうよ。後で説明するわ」
他意のないカザイラへの褒め言葉が気に障った。が、しかめた表情は次のアルの言葉ですぐに直った。
「でも、リアの方がきれいだよね」
即座にリアは足を止めた。
「今、何て言った?」
「え?」
「今、何て言ったのかって訊いたのよっ!」
「リ、リアの方がきれいだって。ご、ごめんなさい」
叱られたかのように怯えて答えるアルを見ながらリアは表情を緩めた。
我ながら現金だ、とリアは思った。身近にいる男性種に褒められただけで機嫌が直った自分がいる。活力の戻った気持ちを言葉に変えた。
「宣戦布告もされちゃったし。こっちもやるわよ!」
「う、うん」
前進すべく、勇んで歩き出した。