1-20 宣戦布告
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「…あたしには、もう、資格がない」
レガートが鼻を鳴らした。
「よく分かってるじゃないか。お互い違うペアになった魔王の座を争うライバルだ。宣戦のごあいさつさ。魔王になるのは、このおれだ、ってな!」
親指で自らの胸を指したレガートの視線が髪の毛に向けられているのにリアは気づいた。
今日身につけているのは、同じ黒い金属製でも小さな花を透かして彫った別の髪飾りだった。レガートから贈られた品はドロスとの一戦で使い、捨ててしまった。
「―」
何も言えずにいるとレガートが背を向けた。後には薄笑いを浮かべたカザイラが残った。
「あなたも酔狂ね。彼から話を聞いた時は、魔王への道を諦めたのかと思ったわ」
カザイラが瞬間、傍らのアルに視線を振った。何が言いたいのか、リアにはおおよそ見当がついた。
「あたしは自分を賭けてるのよ。アンタなんかにとやかく言われる筋合いはないわ」
「そう」
カザイラが笑みを深くする。
「どちらが魔王の調制士になれるか競争ね。結果は分かっているけど。あなたとの因縁も、この一年で決着がつくわ。とても楽しみ」
言い捨てて、カザイラが優雅に身を翻した。離れた場所を歩くレガートを追って去っていく。