1-19 リアの思い
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアはレガートを見た。視線を受け止めたレガートは冷笑で応えた。
「殺したさ。それがどうした?」
何も言えなかった。闘争心の旺盛なレガートとやり合えば結果は見えている。アルの調制士となる道を選んだ自分には口を出す権利もなかった。
リアが押し黙っているとレガートが責めるように言った。
「何か言いたいんじゃないのか? 事あるごとに言ってたじゃないか。魔族であっても争うべき時とそうでない時の区別が必要だ。殺すべき時とそうでない時も同様だ、ってな。いつもなら食ってかかってこられるところだ」
皮肉な笑みをレガートが浮かべた。
魔族は血を流すのを厭わない。だからといって全てを力で解決すべきだとはリアは思っていなかった。相転儀を使えば命を奪うことなど造作もないし、人を手にかけた経験ならリアにもあった。それでもなお、力ある者は行使する勇気と同時に、ぶつかることを避ける知恵や分別も必要だとリアは思っていた。
考え方の相違のためにレガートとは時に意見を戦わせた。それももう、過去のことだ。
リアは思いをそのまま口にした。