1-14 調制士の覚悟
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
…あれだけ激烈な相手だと調制も大変でしょうね。
同情心のようなものをわずかに感じた。そして、すぐに拭い去った。
他人のために割く時間もエネルギーもリアにはなかった。調制士には各々の仕事がある。リアにはアルの調制という仕事があった。調制士への就任は自己の意思により、胞奇子の誘いを受けるか否かも同様だ。調制士となった女性種はみなそれぞれの覚悟の元にここにいた。
…あたしの場合は立場が逆だった上に、ちょっと強引だったけど。
わずかばかりの後ろめたさを感じながら、リアは先刻のドロスの行為に思考を移した。温和に振舞う姿が意外だった。昨日、広間で見せた荒っぽさがまるでない。
…あれで案外、協調的なのかしら? それとも表面を装っているだけか…。
疑問と疑惑が交錯した。
…いずれにしてもアルに近づける必要はない。あえて関わりを持つ理由がないし、むしろ危険だ。それに、最初の見立てが間違っていたとしても、追い詰められると弱いのは確実だ。精神的に穴があるのも変わりがない。
リアは冷静に状況を分析した。