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1-13 魔王になるのはただ一人
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
握手をし終えるとドロスが言った。
「これから茶でも飲んで一休みするつもりだが、一緒にどうだ? 相方の持ってきた菓子もある」
「お気持ちだけ頂戴するわ」
硬い声で応じるリアにドロスが顔を向けた。
「あたしたちはあなたに敵対するつもりはない。でも、馴れ合うつもりもないわ」
「なるほど。魔王になるのはただ一人、か」
「そうね」
瞬間、視線をぶつけ、ドロスが微笑った。
「それもよかろう。人の行き方は様々だ。謝罪を受け入れてくれたことに感謝する」
ドロスがアルを見た。
「アルカシャ・クルグ」
「は、はい?」
「雌雄は最終試練で決するとしよう。魔王になるのはおれだがな」
アルに笑いかけた後、ドロスは表情を引き締めた。
「では、失礼する」
体の向きを変えると控えていたファルネアに声をかけた。
「行くぞ」
「…はい」
ファルネアはか細い声で返事をした。ドロスの後について歩き出す
。生来のものか、それとも疲れているのか、ひどく頼りない感じをリアは受けた。