1-11 ドロスの謝罪
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「どうした? 何か不都合でもあるかな?」
返事をしなかったためにドロスが問いを重ねた。笑みは絶やしていない。
アルに目をやるとドロスを仰いで立っていた。落ち着かない目元は怯えているように感じられた。
リアは鼻から小さく息を抜いた。
…まあ、後ろに隠れなかっただけ良しとしましょ。
胸を張ると敢然とドロスを見上げた。
「何か、ご用? ドロス・ゴズン」
声には険しさが混ざっていた。相手が望むなら闘争も辞さないつもりだった。昨日との違いは人数のみ。アルの状態に不足があってもカバーできる自信がリアにはあった。
式典の最中、壁際にいた警護員を一瞥する。今も同じ姿勢で立っている。仮に衝突しても大事にはならないはずだった。
好意的とは言いがたいリアの対応にもかかわらず、ドロスは笑った。
「そう尖るな、リーゼリア・バザム。おまえたちと争うために声をかけたわけではない。昨日の非礼を詫びにきたのだ」
「詫び?」
「そうだ。本来ならアルカシャ殿から詫びるべきだが、この際だ。女性種であるリーゼリア殿を先にしても失礼には当たるまい」
言うと、ドロスはリアの返事も待たずに跪いた。
「昨日の無礼、どうか許されたい」
左手を体の脇につけ、拳を握った右手を胸に当てて深々とこうべを垂れた。元々の巨体のために跪いてなお高みからとはいえ、儀礼に則った謝罪だった。