1-6 選ばれるのは、ただ一人
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「だが―」
院長が語気強く言った。
「―魔王の後継者に選ばれるのは、ただ一人だ」
場が一瞬で緊張した。リアも院長の言葉に引き寄せられた。
「森は大勢の若き魔族の血肉を飲み込んだ。それほどの犠牲を出してなお、我らが王選びを成すのはなぜか? それは、我らが魔族だからだ」
院長の声が熱を帯びた。手を掲げ、広間を見渡しながら語り続ける。白髪の小男が場を支配していた。
「我らは魔族ゆえに力無き者を認めることはなく、頭上に戴くこともない。力を証明し得た者だけが魔族の上に君臨できる。魔王となる者にとって力は絶対の条件だ。力無き王など魔族は必要としない。我らは絶大な力を持つ王を戴いて誇りある歴史を積み重ねてきた。そして、それはこれからも変わることはない」
院長が言葉を切った。声の調子を下げて話を続けた。
「以上のことを宣言した上で一つの問いを提示しておきたい。魔王を目指す貴公らが一年の間に答えを出しておくべき問いだ。魔王となる者に相応しい資質とは何か? この問いを胸に最終試練までの時を過ごしてほしい。これでわたしからの話を終える」