3-18 歴史に無き力
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「次はあたしからの質問」
気を取り直すと言った。
「あなたの相転儀は、『光』。そうよね?」
アルが頷いた。
やはり!
リアは高揚を覚えた。先刻までの沈む気持ちは失せていた。大広間での直感の正しさが証明されていた。
光の属性の相転儀を使う魔族は極めて珍しい。というよりも歴史上、記録は皆無だ。
魔族を取り巻く世界に横たわる属性は闇であり、相応する色は黒だった。そのため、黒は魔族から最も高貴な色として重んじられていた。求法院の制服の色に採用される理由でもあった。
実際、リアの相転儀も黒と相性がよかった。触媒を髪飾りの形で持ち歩く習慣もあって、装飾を意識して他の色も試してみたことがあるが、魔力の発現には黒が最も適していた。
だが、魔族の世界にも光は存在する。魔力が世界を構成する要素の一部である以上、光の属性を持つ魔族はいてもおかしくなかった。そして、体現した人物がリアの目の前にいた。
希少さは有力な要素だ。アルの相転儀は広間の騒ぎで披瀝されてはいても、全ての人間に見られたわけではなかった。それに、光の相転儀は存在さえ確認されていなかったのだから文献にも載っていない。知らない力に対処するのは困難だ。アルの力は戦闘においても優位を保てると予想できた。リアは大きな可能性を手に入れたと思った。
とはいえ、どれほど大きな可能性であろうと可能性は可能性に留まる。具体的な形にするのがリアの役目だった。