3-17 話しておかないといけないこと
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「…もう一つ、話しておかないといけないことがあるわね」
「?」
レガートのことだった。アルと組むためには曖昧にしておけない事柄だった。
「文礼室に行く前に追いかけてきた男性種がいたでしょ?」
「…レガート、って呼んでたね」
「そう。彼のことよ」
「お互いに知ってるみたいだったけど…」
「そうね。だって、レガートとは出身が同じだもの。父と旧知の貴族の息子で、幼い時から知ってる。…どんな考え方をして、どんな行動を常としているか。どんなものが好きか…。たいていのことなら分かるわ」
そこまで言って、リアは目を伏せた。
「…恋人だったの?」
アルの言葉にリアはかぶりを振った。
「恋人とは違うわ。お互いに愛を囁いたことなんてないもの。…そうね。何て言えばいいのか、自分でも分からないわ。確かなのは、あなたと出会うまでは一番近しくて、一番大事な男性種だったことだけ」
言って、リアは視線を外した。
「…そして、あたしは、自分の目的のためにそんな人を捨てたの」
二人の間に沈黙が訪れた。
ややあって、リアはアルを見つめた。
「軽蔑する?」
アルは首を横に振ることで答えた。
「ありがとう」
静かにリアは微笑った。アルの答えが慰めになっていた。仮に本心と違っていたとしても嬉しかった。