43/312
3-16 一番伸びる人間はあなた
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
返事をしたアルがあまりにも緊張した面持ちをしたので、リアはつけ加えた。
「いい? 期限の直前に到達したあなたは、もしかしたらあなた自身が言うように最低ランクの胞奇子かもしれない。だけど、それはこれからもそうだってわけじゃない。あなた次第でいくらでも向上できるのよ」
リアは、顔を頷かせるアルを見つめた。
分かってる? もし、あなたが最低の胞奇子なら一番伸びる人間はあなたなのよ。今、完成している人間はどうやったって伸びようがない。だけど、能力がありながら磨く機会のなかったあなたには大きな伸びしろが残されている。どこまで伸びるか楽しみだわ。
心の中で呟き、浮き立つ感情のままにリアは笑った。
「な、何?」
アルがうろたえた。楽しみを映したリアの笑みは状況にそぐわなかったようだった。
「ごめんなさい。これからどうやって鍛えようかと思うと楽しくて」
冗談めかしてごまかした。アルが気弱な笑い声を出した。リアは、すぐに表情を引き締めると言った。