4-15 水音
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
次に暗闇の中で目を覚ました二人は、荷物とランプを持つと先へ進んだ。洞窟に入って二度目の食事を済ませた後だった。もう一度眠って起きるまでは水でしのぐ予定だった。
短い距離を歩いたところで二人の道行きはまたもや行き止まりだった。正面には九枚目の扉がある。
扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは、水の音だった。ランプの光も届かない深い暗闇の向こうから激しい水の流れる音が聞こえた。状況がこれまでと異なっていた。
しばらくの間の後でアルが言った。
「今回は、ぼくが先に下りてみるよ」
「気をつけてね」
それまでと順序を変え、アルを先発として二人は壁面を下りた。下はこれまでと同じように岩場となっており、横から聞こえる激しい水音だけが違っていた。用心しながら確認してみると岩場の横は地下渓谷となっていて、下方を水が流れているようだった。ランプの明かりでは見通せない。地下水脈だった。
進む方向を検討し始めた二人は油断していた。新しい段階の感触が気の緩みを招き、激しい水音が周囲の気配を覆い隠していた。気がついた時には次々にランプを壊されていた。
「!?」
ランプが壊される瞬間、二人は白い影を明かりの中に見ていた。それも一瞬、二人は暗闇の中に置き去りにされた。
「イヤっ!! 何!?」
リアは高い声をあげた。複数の何かが腕や脚を叩いていた。背中のザックや編み込んだ髪の毛も乱暴に引っ張られている。耳障りな高い鳴き声が多数、身の周りで聞こえた。何か生き物に囲まれていると思った。肉の感触を持つ何かは、一つ一つの力は強くなかった。全身に及ぶ間断ない接触がリアを翻弄していた。甲高い鳴き声の合唱は殺気立ち、リアを怯えさせた。攻撃は禁じられている。視界の利かない暗闇の中で、リアは身を縮こめることしかできなかった。




