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魔王になるには?  作者: 水原慎
第一章 邂逅
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3-3 リアの部屋

長文なので分割してアップしてあります。

枝番のあるものは一つの文章です。

サブタイトルは便宜上付与しました。

 二人が階段を昇る間、他の胞奇子や調制士とは出会わなかった。大抵の人間は食堂に集まっているか、食料を調達して思い思いの場所にいる時間帯だった。

 二つの踊り場を過ぎ、階段を昇り切るとリアは左に曲がった。高いアーチの天井にはきめ細かなデザインの照明が並んでいる。通路の両側には各十室、計二十の部屋がある。幅も高さも余裕のある重々しいドアを四つやり過ごした中央付近、左手の部屋の前でリアは足を止め、アルに顔を向けた。

「ここよ」

 リアは胸元のポケットから鍵を取り出して開けるとアルを部屋に招き入れた。

 部屋の中は広い空間になっていた。床は足の長い絨毯だった。奥には天井と同じ高さまで伸び上がる窓が並んでおり、窓の外は荘重な造りの広いベランダだった。窓の先には求法院を囲む城壁が遠くに見え、外に広がる森の木が先端を覗かせているのが見えた。両側には豪華な織柄のカーテンが控えている。天井に下がる繊細なガラス細工の照明も豪奢な雰囲気に相応しい品だった。

 反面、内部の物は少なく、部屋の隅の調度品の他は窓の近くに丸いテーブルを挟んて据えられた一人掛けの椅子が一組と窓に向かい合う形で長椅子があるぐらいだ。どちらも優雅な曲線を描いている。一人掛けの椅子の横にはランプの置かれた台がそれぞれ付属していた。椅子やテーブルをのければ小さなパーティーさえ開けそうなゆとりのある部屋だった。両横の壁には他の部屋につながるドアがあった。

 アルが感嘆の声をあげた。続いて素朴な感想を口にする。

「広い」

「そんなに驚かなくてもあなたの部屋もこんなものよ。まだ見てないでしょうけど」

「だって、これを一人で使ってるんだよね? ここだけでぼくの家が入っちゃうよ」

 入口のドアを施錠していたリアは眉をひそめた。

 …どういう家に住んでたんだろ?

 疑問は口にはせず、部屋の奥に置かれている椅子まで歩いた。アルの言葉への感想はすぐに忘れた。

 アルの家の小ささが貧しさを示しているのは確かだ。だが、部屋の中に入ってしまうほどの小ささを単純に疑問に思っただけで見下すつもりはなかったし、気持ちを遠ざけるつもりもなかった。魔族の真価は生まれでは決まらない。個々の持つ能力が全てだ。それに、リアが裕福な家で育ったのは単に運であり、リア自身が優れているからではない。

 手に持っていたアルの荷物をリアは長椅子の端に置いた。一人掛けの椅子の丸みのあるクッションの上に腰を落ち着けるとテーブルを挟んだ向かいの椅子を手で示した。

「座るといいわ。まずは少しお話しましょ。…順番が逆になっちゃったけど」

 リアに促され、急ぎ気味にアルが近づいた。リアと向かい合わせに椅子に納まる。合わせた膝の上に握った手を乗せ、背を屈めた姿は落ち着かない様子だった。

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