4-12 ペナルティー
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「あっ!?」
片足が壁から外れ、リアは声をあげた。気づいた時には下の岩場まで滑り落ちていた。壁面にすがりつくようにして足から岩場に着地し、勢いを残して背中から倒れ込んだ。容器の割れる高い音がした。
「リアっ!?」
上からアルの声がした。リアは跳ね起きながらザックを外し、中身を確認した。体より容器の心配が先だった。落下したのは途中からだったので体は問題ないはずだった。
容器は全滅だった。溢れた水がザックを浸し、外まで漏れ出ていた。
せっかく、ここまで無事に運んできたのに…。
リアは暗澹たる気分を味わっていた。
アルが慌てて降りてきた。口に咥えたランプを外すとリアの名を呼んだ。
「…あたしは平気よ」
答えるリアの声は死んでいた。
求法院の思惑を跳ね返せなかったことが悔しかった。調制士も試練の対象である事実に気づけなかったことも改めて悔やんでいた。そんな事柄は、全く頭から抜け落ちていた。正に思考の盲点、意識の死角だった。
…初日にアルに語って聞かせたのは、あたしなのに。
なのに、この体たらくだった。知っていてもできなければ何の意味もない。リアの中に怒りが湧いた。情けなさに当り散らしたくなり、拳を振り上げた。
「―」
リアは空中で拳を止めた。息を抜くと、手を緩めて下ろした。傍らのアルの存在にかろうじて思いとどまっていた。