4-9 洞窟
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「ぼくが最初に入るよ」
アルが言い、リアが遠慮がちに返事をする間に足を踏み入れた。
…すっかり逞しくなっちゃったわね。
アルの行動は求法院に到達した頃と比べて一変していた。今では大広間でのドロスとのやり取りが間違いだったように思える。
「足元が崩れやすいから気をつけて」
アルの言葉に従い、リアも中に入った。
「!?」
すぐに首筋にチリつくような感覚があった。ごくわずかな違和感だ。違う環境に身を置いたせいかもしれない。そう思ったリアはあまり気にしなかった。アルも足場の他は何も言及していない。
洞窟の中は自然のままの姿をしていた。足の下は土と大小の石がむき出した緩やかな斜面で、脆い。求法院の制服は革靴なので歩きづらかった。側壁を兼ねた岩に手を当て、体を支えながらリアは斜面を下った。
斜面を下り終わると平らな岩場だった。人が数人立てる程度の広さがあり、入口から差し込む光で淡く照らされている。アルが手の中のランプに火を入れ、リアも倣った。手持ち式のランプは相転儀を閉じ込めたクリスタルの上下をハンドルで挟み、周囲を細い金属の筋で保護した姿をしていた。
岩場の先は上も横も荒れた岩肌だった。下は段を成した岩が連続し、奥へと続いている。わずかながら人の手の入った気配があった。ランプの光は二人の周囲を照らす程度で、通路の先までは見通せない。
簡単に言葉を交わすと、二人はアルを先頭に歩き始めた。幅の広い階段状の岩の連続には下に降りていく感覚があった。二人は奥へと進んだ。