4-8 予感の実現
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
予感は二人の出発時刻の到来とともに実現した。
闘技場を出たアルとリアは、指定された場所に到着していた。洞窟は闘技場にほど近い森の中にひっそりとあった。
洞窟は目立たぬ姿をしていた。入口を固める岩は人ほどの高さしかなく、地面から突き出た形をしていた。縦に伸びた亀裂のような開口部は奥深く土を抉っており、入口の岩がなければ地面に開いた大穴に見えたに違いなかった。洞窟は地下へと降りる構造のようだった。
二人は指示に従ってザックの中身を確認した。
ザックの内容物は二人とも同じものだった。簡略な地図と最終試練における詳細な指示、手持ち式のランプが一つに、水と食料だった。もう一種類は、水の入ったガラス製の密閉容器だ。四本もある。
指示は細かかった。胞奇子、調制士が共に同じ重さの荷物を背負って徒歩で移動することが義務づけられており、代わりに持つ行為は禁止されていた。相転儀による洞窟内の環境の変更禁止や、他のペアを含む生命体への攻撃の禁止という制約も課されていた。中は求法院と同じシステムを採用し、禁止事項や義務については相転儀の使用を厳しく監視するとある。ごまかしはできそうになかった。
食料は、およそ一日分だった。金属製の水筒に入った飲用水も同じだ。ザックの重量のほとんどはガラス容器の水だった。円筒状の容器はザックの容量の三分の二を占め、しかも容器の破損や紛失は減点の対象とされていた。
…やってくれるわね、まったく。
クサりそうになる気持ちをリアは宥めた。荷物を背負うとアルに声をかけた。
「急ぎましょ。慌てる必要はないけど、悠長に構えてもいけないわ」
二人は入口の手前まで移動した。