4-1 ルルカ・ゲッセルとの接触
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
階段を降りていたリアは、下から昇ってくる人影に気づいた。
―ルルカ・ゲッセル。
向こうもリアに気づいたようだった。顔を上げると目礼をして寄越した。リアも同じ仕草で返した。
女性種の宿泊棟、一階から二階へ上がる階段での出来事だった。リアはルルカとすれ違うと踊り場へと足を下ろした。振り返りたくなる気持ちに抗い、リアは何事も無いかのように階段を一つ一つ降り続けた。
一階の廊下に足をつけると小さく息を吐いた。今では目立って機会の少なくなった他の参加者との出会いにリアは緊張していた。王選びが始まって一年が過ぎようとしていた。
最終試練が近づいていた。
アルとレガートの死闘から、もう半年が経つ。その後のカザイラとの私闘については経緯を正直に告げて始末をつけていた。
レガートの敗退によって、残るペアはリアたちを含めても三組にまで減っていた。このまま何事もなければ、最終試練はガルカとルルカ、ゾグナとフェニアのペアと競うことになるはずだった。
他の調制士二名とは、出会うと目礼をしてすれ違うのが慣例だった。胞奇子はガルカとゾグナの仲が相変わらず悪く、二人はアルに対して返礼しないところが違う。おそらくは闘争心の表れだった。
リアもアルも、残ったペアと深い関わりを持とうとはしていなかった。生き残った連帯感と平行するようにして、最後には蹴落とすことになるという競争意識があった。何かの弾みで戦闘に突入しかねない危惧もあった。