表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王になるには?  作者: 水原慎
第四章 決着
285/312

3-12 アルの本質

長文なので分割してアップしてあります。

枝番のあるものは一つの文章です。

サブタイトルは便宜上付与しました。

 リアが歩いて近づくと、アルが初めて立ち上がった。顔には安堵の表情がある。安否を問う言葉を取り交わした二人は笑顔になった。

 アルの手の異常に気づいたリアは眉をひそめた。

「あなたこそ、大丈夫?」

「え? うわっ! 何これっ!?」

 リアの視線を追って自分の手を見たアルが驚いていた。手の甲の皮膚がずる剥けて血が滲んでいる。指先に力をこめ過ぎたせいだろう。闘いの見届けに夢中で今まで気づかなかったようだ。

 リアは、苦笑と共に感動していた。

 カザイラとの死闘には危ない場面がいくつかあった。アルは、その度に手に力を込めて我慢したに違いなかった。

 カザイラとの戦いは、リアにとって大事な瞬間だった。手助けは感謝すべきものなどではなく、忌避すべきものだった。もし、闘いに介入するようなことがあれば、リアは誇りを傷つけたアルを許さなかったはずだ。なじり、傷つけ、脅しではなく本当に殺しさえしたかもしれない。アルは確かにリアとの約束を守ったのだ。

 これほどの男を魔族らしくないとずっと思っていたなんて。

 リアはアルを静かに抱きしめた。

「…ごめんなさい」

 呟くように言った。

「え? あ、これは、ぼくが勝手に…」

 勘違いしたアルが戸惑っていた。

 リアは苦笑しながら抱きしめ続けた。

 死んだカザイラの方がずっとアルの本質に気づいていた。

 そのことが、おかしくも哀しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ