3-11 最後の足跡
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「…どうして?」
リアの呟きは攻撃を甘んじて受けたことへの疑問の表明だった。カザイラの相転儀はリアと同様に穿刺体を何体でも出せる。瞬時に生成する方法があるのも同じだ。いくらでも攻撃の防ぎようはあった。
「…決めていたの。一体目がやられたら、終わりにしようって。…見苦しく生き残るのが目的なら…、最初からこんな勝負…、挑みはしないわ」
カザイラの声は掠れていた。時折、空気が洩れるような音が混ざる。傷の深さを示していた。二人は寡黙に見つめ合った。しばらくしてカザイラが言った。
「…さんざん嫌味を言ったけど…、あなたのこと、嫌いじゃなかったわ」
リアは顔を歪めた。虚を突かれた思いがしていた。カザイラの言葉とは思えなかった。
出会ってから、ずっと仲が悪くて、大いなる目的を潰されて、理由があるとはいえ命をもらうとまで宣言した相手に最後の最後でそんな言葉を置いていくのか…。どこまでも勝手なやつ。
視線を交わしたまま、リアは黙っていた。無表情に口を開いた。
「あたしはアンタなんか嫌いよ」
カザイラは苦笑を浮かべた。
「だけど―」
リアが一度口をつぐむとカザイラは物問いたげな瞳をした。
「―才能は認めていたわ」
続く言葉を聞いたカザイラは、微笑って目を閉じた。
それが、リアのライバルがこの世に残した最後の足跡だった。