3-9 勝負の始まり
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
勝負の始まりは偶然だった。一羽の鳥が樹上から飛び立ち、小さな羽ばたきの音とさえずりを残した。二体の穿刺体は同時に動いた。
白い穿刺体は剣を大きく振りかぶり、上段から叩きつけた。ヴァン・キ・ラーゴが盾で防ぎ、剣で突いた。白い穿刺体が盾で受け止める。膠着したのも一瞬、二体の穿刺体は攻撃と防御の応酬を繰り返した。
白い穿刺体の剣が首筋を突こうとした。ヴァン・キ・ラーゴは半身を引き、横から薙いだ剣で防いだ。危うい瞬間だった。
…気をつけないと。
危うく首を飛ばされるところだった。擬似生命体に過ぎないヴァン・キ・ラーゴは首を飛ばされても死なない。しかし、人と同様に目から視覚情報を取り入れているため、情報経路が一つ減ることになる。気をつけるに越したことはなかった。
状況を反芻していると白い穿刺体の頭部に動きがあった。触角のような角が引きつったように動いた。
リアは、ヴァン・キ・ラーゴの盾を切り離すことで対応した。スティアータの鎖やデランの髪の毛を連想していた。切り離しながら左腕を突き出し、盾を触角の前に放り出した。同時に左腕には新たな盾を形成した。
「!?」
次の場面にリアは驚愕した。
巻き取られることを予測した盾は、空中で二つに切断されていた。白い穿刺体の触角はさらに伸び、リアまで迫った。リアは急速に体を引いて避けた。伸びた触角は、それまでリアがいた場所の地面を切り裂いていた。動作について来れなかった髪の毛が、断たれて空に舞った。盾で勢いを殺していなければ、触角はリアを切断していたはずだった。リアは身震いした。