3-7 あたしがあなたを殺すわ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
二人のやり取りを見ていたリアは困惑顔になった。カザイラの真意を計りかねた。
カザイラが薄い笑みを戻した顔を向けた。
「よく分からないという顔ね、リーゼリア・バザム」
渋い表情のままリアは頷いた。
「わたしも最初は分からなかったわ。でも、彼はあなたが思っている以上に魔族よ」
「?」
余計にリアは分からなくなった。カザイラの言葉はリアの困惑への回答になっておらず、そのくせ自信に満ちていたからだった。
カザイラが苦笑した。
「わたしが困らないと言っているんだから、いいでしょ? おいでなさい」
返事も待たず、カザイラは身を返して手招きした。
カザイラの後に従って二人が辿り着いたのは森の中の廃墟だった。アルがゲフィラ・オルに襲われた場所でもあった。いくつもの倒木が闘いの名残を示していた。ゲフィラ・オルの死骸は見当たらなかった。
「わたしとあなたで一騎討ち。当然、わたしは命をもらうわ」
建物の残骸の近く、木の生えていない空白地帯でカザイラが言った。
不敵な笑みでリアは応じた。もとよりそのつもりだった。カザイラにはもう守るべきものがない。こちらも殺すつもりでやらねば勝てるはずもなかった。道すがら覚悟は決めていた。
横にいるアルを見た。告白の言葉を残しておきたいという気持ちが一瞬よぎり、すぐに振り払った。
何を弱気な。勝てば済む話だ。同じ調制士に負けるような女になど想いを告げる資格もない。
厳しく己に言い聞かせた。
「アル、決して手出ししないで。そんなことをすれば、あたしがあなたを殺すわ」
真剣な表情で言うリアに、アルは無言で頷きを返した。離れた場所まで歩くと残骸となった土台の上に腰を下ろし、肘を膝の上に乗せると手の指を組み合わせた。姿勢を固めて見守るつもりのようだった。