2-11 受け取りしもの
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
音と破壊の影響が去ると、地上には折り重なったアルとレガートの姿があった。
レガートは背中から地面に倒れこんでいた。体に損傷はなかった。代わりに六枚の翼が大きく広がり、地面を抉っていた。翼は、全てが大きくひび割れていた。レガートは翼を使って衝撃を吸収していた。喉元にはアルの光剣が突きつけられており、顔の魔相も消えていた。
「殺せ」
レガートは静かな表情をしていた。アルは険しい顔つきを崩さなかった。
「殺しはしない。…おまえを殺すとリアが悲しむ」
レガートの表情がわずかに揺らいだ。
「ぼくはおまえを殺したかったわけじゃない。謝らせたかっただけだ」
無言の時が数刻あった。
「謝る気があるなら、ここでぼくが謝罪の言葉を預かろう。どうしても謝る気がないなら、死なない程度に体を削り取ってやってもいい。そのぐらいなら、ぼくにもできる。おまえは、たった一つの言葉を惜しんだために一生をベッドの上で暮らすんだ。言葉を惜しんだことを後悔しながら」
レガートの表情が歪みを増した。目を閉じ、葛藤を示すように歪んだ表情が動いた。目を開けた時には、表情は再び静かになっていた。
「…すまない」
小さくとも明瞭な声を受け取ったアルは、光剣を突きつけたまま頷いた。
「スカーフをもらおうか」
アルの言葉に従い、レガートは光球と体との間に挟まれた剣から手を放し、スカーフを取ると差し出した。
スカーフを受け取ったアルは、そこで初めて表情を緩めた。光剣をレガートから放して立ち上がるとスカーフを持った左手を高く掲げた。
歓声が、巨大な闘技場を揺るがした。