2-9 『趣味が悪い』
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「!?」
異変を感じたレガートの表情が歪んだ。
アルは一瞬で裂け目を閉じた。再度の光の展開でレガートの槍は先端を固定された。内側の光球をそのままにし、アルは外側の光球を高速で回転させた。光球に挟まれた槍の先端は折り取られ、外側の光球を包囲していた他の槍は弾け飛んだ。アルは光球を後方に急速に移動させ、大きな円を描きながら地面に着地した。アルは内側の光球を広げ、外側と一体化させると残っていた槍の先端を排出した。離れた場所でアルとレガートが睨み合った。
レガートが笑った。
「切りがないな」
再びレガートは六枚の翼を広げた。
「こいつの利点は二つある。一つは死角がないこと。もう一つは、両手が使えることだ」
下側二枚の翼の一部が両刃の剣に変わり、レガートの手に移った。
「おれは、どうしてもおまえを殺したい。おまえにも二つの目的がある。決着はつけなきゃなるまい」
レガートを注視していたアルが言った。
「その前に一つ訊いておく」
「?」
「リアの髪飾り…、あれはおまえが贈ったものか?」
レガートはかすかに眉根を寄せ、息を抜くように笑った。
「そうさ。随分と前のことだがな。最初に渡した時は『趣味が悪い』って言われたよ。それでも次の日、あいつの髪に見つけた時は嬉しかったものさ。…今となってはどうでもいい話だ」
二つの剣先をレガートが合わせた。硬く、乾いた音がした。