2-5 卑怯
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
衝撃の覚めやらぬ状態でいるとレガートが言った。
「おまえには手を出さないよう指示しておいたが、結構骨があるじゃないか。あれでおまえの性向が把握できた。挑発すれば必ず乗ってくると確信したよ。おれの権利はカザイラの時に一度使ってしまってたからな。どうしてもおまえを動かす必要があった」
意地悪くレガートが笑った。策を成功させた者の満悦した笑みだった。
「…それにしても解せないな。どうやら、おまえはおれの能力を知らないようだ」
見下ろすレガートの視線にアルは一つ頷いた。レガートがリアのいる方角を見た。
「あいつのヴァン・キ・ラーゴなら、おれの相転儀をほぼそのままコピーすることだってできただだろうに」
再びアルに視線を戻すとレガートは勝ち誇った顔をした。
「おれが勝った時のために恩でも売っているのかな? だったら、愚かな話だ。もう、あの女なんかに用はないからな。おまえらは、魔王になろうとするおれの前に立ち塞がる壁、いや、目障りな石ころだ」
槍の一つが光球を激しく突いた。中でアルが苦い顔をした。
「…そうじゃない。リアが言わなかった理由は、きっとぼくと一緒だ。ぼくが卑怯に思えて訊かなかったように、リアもそう思って言わなかったに違いない」
槍が、また一つ突いた。
「卑怯もクソもあるかっ! 勝負は勝ち残らなきゃ意味はないんだよっ!」
太く重い槍の突きが続いた。攻撃の度に衝撃で壁が壊れ、破片が飛び散った。