2-3 レガートの相転儀
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「!?」
アルが空を見上げた。
「何を驚いている? この翼は飾りではないぞっ!」
声と同時に下側四枚の翼が伸びた。先端を尖らせ、幾重にも分裂してアルを襲った。柔軟で鋭い槍の連撃だった。
光球をまとった姿でアルは高速で逃げた。追撃する黒い槍は、連続した激しい音とともに闘技場に穴を穿った。
アルが十分に遠くまで去るとレガートは地上に降り立った。安定した足場を確保し、腕組みした姿で黒い槍と化した翼を操った。黒い槍は、どこまでも伸びて光球を追った。
黒い翼はレガートの相転儀だった。求法院への一番乗りを実現させた原動力でもあった。王選びが始まると、レガートは森の外から急上昇しつつ求法院の上空まで移動し、そのまま一気に急降下した。森の凶暴な生き物は空にもいるが、急激な方向転換と高速移動で振り切った。前庭に降り立った瞬間には、見物人から歓声と拍手が沸いた。戦闘は皆無だった。
右に旋回したアルは、レガートの左側面に入り込んでいた。レガートは左の翼全てを使ってアルを攻撃した。降り注ぐ槍の雨を、アルは際どくすり抜けた。背後に回り込もうとしていた。
「ダメっ!! アルっ!」
リアが叫んだ。
立ち上がったリアの声が耳を掠めた時には、アルはレガートの背後を取っていた。光の剣を手にレガートに迫った。