1-24 勝利の可能性
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアが沈んだ思いでいるとアルが言った。
「大丈夫だよ。殺す必要はないんでしょ?」
「それは…、その通りよ」
浮かない顔でリアは答えた。
決闘の仕組みはアルの言う通りだった。目的は相手を打ち負かすことにあり、必ずしも殺す必要はない。極端な話、決闘が始まった途端に相手が降参し、スカーフを差し出したとしても勝負は決する。要は叩きつけたスカーフを取り戻せばいいのだ。
相手の生命を奪わなくてもいいからって、簡単に考えてるわけでもないでしょうけど…。
リアはアルの顔を見つめた。
こちらが殺すつもりがなくても、レガートは間違いなく殺しにくる。容易にスカーフを返して寄越すとも思えなかった。
だけど…。
勝利の可能性に思い至った。
アルは決して負けない。なぜなら、光球が絶対的な防壁となってアルを守るからだ。これまでの調制においても、戦闘でどんな攻撃を受けてもアルの光球は壊れなかった。その優位を活かして持久戦に持ち込み、レガートの攻勢が弱まったところでこちらの攻撃を叩き込めばいいのだ。
突破口を見つけたリアの心は明るくなった。レガートにも勝てそうな気がしてきた。
「命がけの仕事になるわよ」
真剣な顔で言うとアルが頷いた。やっと、リアは表情を緩めた。
こうなってしまっては仕方がない。既にサイは投げられている。ならば、必ず勝てるようにするだけだ。
「まずは腹ごしらえね」
リアは言い、二人は改めて食堂を目指した。