1-23 人の死を汚す者を許さない
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「何てことするのよ、アル!」
リアは、バスケットを手に早足で歩きながら激しくアルを詰った。
食堂に向かって中庭を歩いている最中だった。バスケットを投げ出したために食べ物が台無しになり、やむなく再調達に行くところだった。
「どうしても許せなかったんだよ」
アルもまた歩きながら答えた。言葉は穏やかながら、口調が固い。リアを見ようともしなかった。
「こっちを向きなさい!」
リアは立ち止まると無理矢理アルを振り向かせた。足を止めたアルは、きつい眼差しでリアを見返した。
「ぼくは、人の死を汚す者を許さない」
アルの目を見つめていたリアは深く息を吐き、首をうなだれた。寝室で襲撃を受けてギーツを問い詰めた時と同じ目をしていた。こうなるとアルは梃子でも動かない。
調制が進んでいたことをリアは後悔した。
調制の過程でアルは高度な技を身につけ、闘争心も培った。王選びが始まって間もない時期にドロスという強敵も倒した。これまでの期間に調制士として伝えるべきことは伝えてある。レガート相手でも決して引けを取らないと確信を持って言えた。
しかし、対するのは、あのレガートだ。リアは不安を拭えなかった。しかも、小競り合いならまだしもスカーフを投げつけるとは。つけた自信が裏目に出ていた。