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1-22 決闘の成立
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
制限は回数にあった。使えるのは王選びの間、一度だけだ。決闘の勝敗に生死は問わず、相手を故意に死に至らしめても罪には問われない。
だが、殺す権利は同時に殺される危険と背中合わせだった。そして、魔王になるチャンスを逃す場面でもある。勝負を挑んだ者も挑まれた者も、負けた者は胞奇子の資格を失うからだ。
「リアに謝れ」
アルはレガートの問いには答えなかった。真っ直ぐに見上げると固く告げた。
「嫌だと言ったら?」
「おまえを打ち倒して、勝ち取るだけだ」
レガートが鼻で笑った。
「本気のようだな。アダランの申し出、確かに受け取った」
スカーフを手にしたレガートとアルが視線を激しくぶつけ合った。
リアは嘆息した。とんでもない話になったと思っていた。嫌な予感がして、レガートに目をやった。
レガートは薄く笑っていた。驚いていたように見えたのに、どこか不自然さを感じた。
カザイラは、二人の激しいやり取りの最中も平然とお茶を飲んでいた。