1-21 アダラン
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
レガートの大きな声が後ろから追ってきた。
「叶いもしない夢が、父親の死よりも大切かっ!?」
「―」
アルが身を翻して駆け出した。
「アル!?」
リアが呼び止めようとした時には遅かった。アルはレガートに駆け寄っていた。スカーフをむしるように解くとレガートの胸に叩きつけていた。レガートが空中でスカーフを掴み取った。
リアはバスケットも放り出して二人の元に駆けつけた。
「何てことを…」
レガートと睨み合うアルを見て呟いた。驚きと悔悟の念に支配されていた。
小馬鹿にしたような笑い声を一つ、レガートが出した。
「分かっているのか、貴様? 自分のしでかしたことが」
レガートの言う通りだった。リアは心の中でアルの行動を責めていた。
アルがやったことはアダランの申し出だった。胞奇子のみに許された、ある種の決闘だ。紅いスカーフを外して相手の胸元に投げつける行為は、『おまえの心臓をこんな色で染めてやる』という宣言だった。
決闘の理由に制限はなかった。王になるために相手が邪魔だったから。存在そのものが気に食わない。単なる気まぐれ、退屈しのぎ。理由は何でも構わない。