1-16 悲しみを受け止めて、なお前に進め
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
中からアルの声がした。リアは中に入ると、いつも通りに金属球を拾い上げ、ヴァン・キ・ラーゴを作り出した。ヴァン・キ・ラーゴとアルの模擬戦が始まった。
模擬戦を眺めながら、リアは母親からの手紙のことを思っていた。
母親は父親の死を知らせずにおくこともできた。尊敬や愛情を常日頃から口にしていた者を失えば、娘であるリアが動揺するのも承知していたはずだ。それでもなお、母親は知らせる方を選んだ。
慮れば、王選びが終わった時、知らずにいたことを後悔すると考えたのだろう。悲しみを受け止めて、なお前に進め、と母親は言っていた。
ならば、やるべきは一つだ。
今まで通りの王選びの継続。否、これまで以上に奮起した挑戦だ。たとえ母親まで失おうとも立ち止まりはしない。
考えているうちに目頭が熱くなるのをリアは覚えた。慌てて首を振った。
バカなっ! 訓練の最中に泣きそうになるなんて!
己を責めた。
着弾音とアルの声が響いた。リアが顔を上げると、昨日の戦闘と同じようにアルが床に転がっていた。ヴァン・キ・ラーゴの形態は、同じく砲撃タイプだ。
リアは苦笑した。
昨日と同じ負け方だった。その上、時間が短かった。どうせ、よそ見でもしていたに違いない。原因は分かっていた。分かっていたので強くは責めないことにした。
「こらっ! 『次は、勝つ』んじゃなかったの?」
間延びしたアルの謝罪の声が聞こえた。
「もう一度よ!」
笑って、リアは宣言した。