1-13 貴族からの転落
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアはアルに母親からの手紙を見せた。
手紙に目を落としていたアルが顔を上げた。
「貴族じゃなくなっちゃった」
苦笑のような表情をリアは浮かべた。どんな顔をしたらいいのか分からなかった。リアは貴族の地位の仕組みと自分の状況を語った。
「…もし、あなたがペアを解消したいと言うなら拒まないわ」
口にしてからリアは急に思い当たった。自分自身思いがけない言葉だった。
ここでアルが解消を申し出たら、その時点でリアの夢はお仕舞いだった。調制士を失っても胞奇子は王選びを継続できる。だが、胞奇子を失った調制士は自動的にリタイアなのだ。
リアは顔を伏せ、指を組んだ手を脚の上に置いてアルの言葉を待った。やけに外の雨音が響いて聞こえた。
訓練に調制士は必要だ。いなくなれば調制に支障が生まれる。それに、口にしてみたところで恣意的な解消などできる仕組みにはなっていなかった。
それでもリアは、敢えて言いたかった。出会った時、アルはリアが貴族だとは知らなかったし、知る間もなかった。知っていたとしても王選びでは貴族の称号など大した意味はない。とはいえ、今ではアルはリアのことを知っていたし、胞奇子の中には称号に惹かれる者もいるはずだった。リアは、アルの気持ちを知りたかった。