1-11 不吉な予感
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアは、首を上げた穿刺体としばらく見つめ合った。
不吉な予感がしていた。
母親の送り出した穿刺体が、今ここにいること自体あり得ない出来事だった。知らせなど送るわけがないのだ。母親は娘であるリアの野望を知っている。当然のこと、置かれた状況もわきまえている。それでもなお知らせるべきだと母親が断じた事象だ。吉事であるわけがなかった。
「―」
意を決して穿刺体に触れるとリアは短い言葉を口にした。母親との間で取り決めた合言葉だった。穿刺体は目的の人物の触れた状態で特定の条件がなければメッセージを開かない。リアの場合は合言葉が条件だった。
穿刺体が形を崩した。急速に鳥の形を失うと二つ折りになった紙片に変わった。魔力を込める前の元々の姿だ。相転儀を利用したランプのように魔力の込められた特殊な紙だった。
リアはテーブルから紙片を取り上げた。紙片を開く前も少しためらった。息を一つ吸い込むと手早く紙片を開いた。
紙片にはごく短い言葉が綴られていた。
言葉を拾ったリアは顔を歪めた。
しばらくの間、紙片を眺めた姿勢で立っていた。紙片を閉じ、顔を伏せると目をつむった。
父親急逝の知らせだった。