1-5 弾丸バトル
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
まったく。調制士を動揺させて何が楽しいんだか。
訓練の様子を眺めながらリアは頬に手を当てていた。まだ、熱さが残っている。
視線の先ではヴァン・キ・ラーゴとアルの攻防が続いている。大砲を撃つヴァン・キ・ラーゴに対してアルは光球を打ち出して対応している。体に抱えるような大きな光球ではなく、手の平から発射する小型の光球だ。身に纏う光は維持したまま続けざまに飛ばしている。破壊力こそ見た目相応だが、守備力を落とさないのが強みだった。半年の間にアルが身につけた技の一つだ。
ヴァン・キ・ラーゴが高速移動を始めた。足の裏面に車輪を生成し、床に噛ませて移動する変則的な移動形態だ。ハイスピードと急激な方向転換という背反した要素を同時に満たす。アルは、変化したヴァン・キ・ラーゴと互角に渡り合っている。訓練は、さながら二者の弾丸バトルの様相を呈した。
リアは、怖じけることなくヴァン・キ・ラーゴと対戦するアルを目で追った。
ギーツと別れた日からアルは変わった。より訓練に勤しむようになり、訓練中の気迫は時にリアを驚かせるものになっていた。
積み重ねた訓練はアルの雰囲気さえも変えた。日常の動作やちょっとした表情にも変化は及び、強い魔族特有の気を感じさせるまでになった。同じように魔力を包蔵する人間なら気づくほどのレベルだ。目に映るものでしか物事を判断できない愚か者でなければ、今のアルからは何かを感じるはずだった。アルの変化の源は内面の変化だった。