1-4 狂犬に絡まれたリア
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
そうなのよ。そんなヴァン・キ・ラーゴなんだから、次は負けないのに。
リアの思考は、いつの間にかスティアータへと移っていた。
スティアータは現在も警護員として勤務していた。今日の訓練の前にアルと宿泊棟に入った時も、いつものように椅子に座っていた。変わったのは目から挑戦的な光が消え、薄く笑ったような雰囲気が生まれていることだった。半ば親しみ、半ば虚仮にしたような感じを受ける。
…結局、狂犬に絡まれたってことかしら。
スティアータの様子を思い浮かべながらリアは思った。
「見守ってくれる人がいるってのは、いいモンだね」
「へ?」
不意に言葉をかけられ、リアは間抜けな返事をした。
「見守ってくれる人がいるってのは、いいモンだねって言ったんだよ。いつもありがとう、リア」
「―!」
急に礼を言われ、リアは動転した。顔が赤くなった。
「何、突然お礼なんて言ってんのよ!? ほら、次行くわよ、次!」
苦笑したアルが定位置に戻る。リアは頬を触りながら台まで近づくと金属球を手に取った。下手でアルに向かって放った。金属球は空中で変化し、着地した時には大砲を肩に装備したヴァン・キ・ラーゴになっていた。
形態を見て取ったアルが光をまとった。前を向いたまま後方へ猛スピードで蛇行した。
回避行動を取るアル目がけてヴァン・キ・ラーゴが大砲を発射した。左肩に装備された砲身を手で押さえ、ヴァン・キ・ラーゴは連射した。黒い砲弾は爆発こそしなかったものの、重い着弾音を響かせた。リアの相転儀によって生み出された弾丸は絶え間なく続いた。