4-24 おまえは必ず魔王になれ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「そんな顔をするなよ。きっかけはおまえだったかもしれないが、ドロスとの私闘は確かにおれが引き受けるべきものだった。…勝てなかったけどな」
「それはっ! 前の戦闘で負傷したからでっ!」
ギーツが苦笑いした。
「少しばかり腕に自信があるからって、相手の力を見くびった報いがきたのさ」
アルが表情を歪めた。どちらがリタイアした側だか分からない。
「ギーツは何も悪くないのにっ! ぼくだって助けてくれたのにっ!」
叫んだアルは、短くすすり泣いた。
「…いいか、アル。魔王になろうって人間なら、こう思え。安い情に流されて階段を踏み外した間抜けが消えた。これで魔王の座が一つ近づいてラッキーだ。…なんて言ったところで、おまえには無理か」
ギーツが笑うと、アルは涙ながらに頷いた。ギーツが軽く息を抜いた。
「なら、こうだ。おまえは必ず魔王になれ」
「?」
顔を上げたアルは物問いたげにギーツを見た。
「おまえは、おれの分も背負って魔王になるんだ。そして願わくば、この世界にはおれのようなやつもいるってことを忘れずに王として生きてくれ」
ギーツが身を起こし、折り曲げた左腕を差し出した。体は重そうだった。アルは涙を拭うと、同じように折り曲げた左腕を使って力強く握り返した。
「誓うよ。ぼくは、必ず魔王になる」
アルの宣言に、ギーツは静かな笑みで応じた。
「じゃあな」
簡単な挨拶がギーツの最後の言葉だった。再びキャリアに身を横たえると治癒師の手で旅客船へと運ばれていった。