4-23 ナヤカのドレス姿
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
二人は本棟の出入り口に目を向けた。食堂側に抜ける出入り口に動きがあった。
最初に出てきたのはナヤカだった。求法院の制服ではなく、私物のドレス姿だ。押し開けた扉の脇に立って手を添えると固定した。
次に出て来たのは大きな荷物を両手に抱えた男性種の文礼員だった。後に小さなバッグとナップザックを手にした女性種の文礼員が続いた。
文礼員に続いて出てきたのは、車輪のついたキャリアに載せられたギーツだった。前開きになった白い治療衣を着て横たわっている。キャリアの前後に治癒師が一人ずつ付き添って支え、出入り口から続く石畳の上を進んだ。
荷物を持った文礼員が歩き過ぎ、キャリアが二人の前まで来るとギーツが声をかけて止めた。
キャリアの後ろにはナヤカが目を伏せて立っていた。ナヤカは黒い袖なしの衣服をベースに、瞳と同じ薄い紫色をした薄絹を重ねた軽装のドレスを着ていた。今日の空は皮肉なほどの陽気だ。
上半身は光沢のある黒い布地がそのまま使われており、襟元を薄絹でできたフリルが埋めている。薄絹でできた袖には余裕があり、袖口にもフリルがあった。薄く透けた袖を通してナヤカの細い腕が窺える。下の部分は足首丈のスカートに襟や袖と同じ薄絹がドレープさせて重ねてあった。清楚で可憐なドレスだった。
私物は胞奇子や調制士が生きて求法院を出ることがあれば返却される。きっと、こちらがナヤカの本当の姿なのだとリアは思った。だが、求法院の制服を脱ぎ去った姿は調制士としての資格の喪失を意味した。その可憐さが今は哀れだった。
「ここでお別れだな」
ギーツが言った。リタイアした者にしては明るい声だった。
「ドロスはバカにしてたが、おれを襲ったやつらも王選びの参加者。確かにおれの息の根を止めたよ」
「…ギーツ」
応えるアルの声は弱々しかった。