4-19 ドロスの遠隔攻撃
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
アルは剣を収めると高速移動を始めた。円を描いてドロスの背後に回り込む。グナエグと対峙した際に使った戦闘法だった。
ドロスが体の向きを変え、アルに向かって両腕を突き出した。
訝しんだ瞬間には、腕に生えた棘が打ち出されていた。無数の棘が飛来してアルを襲った。
「―!」
旋回行動は予定を狂わされていた。軌道を大きく変え、蛇行して棘の回避を優先した。ドロスの打ち出す棘が光球を追って空中を走った。
遠隔攻撃までできるなんてっ!
攻撃を回避しながら、アルは困惑していた。
自体強化は運動能力を引き上げ、防御や攻撃の力を向上させる。魔力を術者自身に集中させるために、飛び道具などは使えなくなるのが通常だった。訓練中に授けられたリアの教えもギーツの講義も同じ内容だった。あり得ない状況がアルの前にあった。ドロスの相転儀はアルの知識の範疇を超えていた。
「どうだ、スゲえだろっ! オレ様のような優秀な人間ともなると、こんな芸当までできるのよっ! てめえらみてえなクズは優れた人間に蹴散らかされて、消えちまうのが運命だと思い知れっ!!」
ドロスの声に呼応して威力を増大させた攻撃がアルを捉えた。棘の直撃を受けたアルは押しやられて森の木に激突した。光球は木の根元で動きを止めた。