4-17 そんな王なら、ぼくはいらない
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「…あんだとお?」
ドロスは不愉快そうに顔を向けた。ギーツから足を外すとアルに向かって踏み出した。
「カスが。てめえなんぞに許してもらう必要なんざねえって言ったろうが?」
「それでも許さないと言ったら?」
「…てめえから潰してやるよ」
凄むドロスに、アルが光の剣を現わすことで応えた。
「いい度胸だ。カスはカスなりにちったあマシになったか? 所詮、オレ様にゃあ届かねえがな」
ドロスの後ろでギーツが半身を起こそうとした。
「…アル、…そいつは、おれが…」
「てめえはそこで大人しく見てろっ! このカスがオレ様に無様に殺されるのをなっ!」
吐き捨てる声に押されたようにギーツが沈む。アルの近くまで行くとドロスは歩みを止めた。
「王は民を守らなきゃいけねえだあ? 甘ったるいことを言いくさるんじゃねえよ。邪魔なら親兄弟でも容赦なく殺すのが魔族だろうが」
「…そんなのが魔族の全てじゃない」
「オレ様にとっちゃあ、そうなんだよ! オレ様が大事にできるのはオレ様だけだ! オレ様に従うやつらはコマだ! 一族ですら逆らうならぶっ潰す! それ以外は、それこそどうだっていいんだよ!」
「知らない人間だって、関わり合ってできてるのが世界じゃないかっ!」
「他人のことなんか知ったことか! どんな野郎だろうが、押しのけ、踏み潰し、オレ様は頂点に立つ! てめえらはそのための贄だっ! 贄は贄らしく、大人しくオレ様に食われてりゃあいいんだよっ!」
「―そんな王なら、ぼくはいらない」
固い声でアルは言った。光の剣を構えた。