4-9 ギーツの攻勢
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ギーツが仕掛けた。ドロスに向かって駆けるとスティックを大きく振り上げた。
二つの岩塊とスティックがぶつかった。
ギーツが先端を返し、下から振り上げた。ドロスが右の岩塊で迎撃する。ギーツとドロスは数度の打ち合いを繰り返した。
「!?」
その内にドロスの表情に疑念が浮かび上がった。スティックによる打撃は一撃ごとに鋭さと重さを増し、ドロスを翻弄し始めた。付属する平たい尖りが欠け、岩塊の表面が徐々に削り取られた。受け止めたドロスの腕は打撃の方向へと弾かれ始めた。
幾度目かのスティックの打撃によって右の岩塊が砕け散った。返す先端でギーツはドロスの左腕を切り落としていた。肘で断たれた左腕と岩塊が地面に落下し、平たい尖りをめり込ませた。バランスを崩したドロスもまた背中から地に落ちた。重い音が二つ、響いた。
ドロスの悲鳴がこだました。
残った右手で肘を押さえ、倒れたまま身をよじり、呻いた。苦痛の表明だった。押さえた太い指の合間から鮮血が滴り、地面を赤く汚した。
「…き、汚えぞ。…何だ、その棒っ切れは?」
地面を必死で蹴り、後ずさりながらドロスが上体を起こした。顔は歪み、脂汗が滲んでいた。肘からの血の流出は止まりつつあった。岩塊を現した時のように肘を岩が覆い始めていた。
「汚い? 汚えのは、てめえの心根とやり口だろ?」
ギーツがスティックを一振りし、血を払った。