4-4 ドロスとナヤカの因縁
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ドロスが愉快そうに大声で笑った。アルが気色ばんだ。
「リアに何したんだっ!?」
一転、険しい目をドロスは向け、はやるアルをギーツが抑えた。
「大丈夫だ、アル。おまえの調制士はそんなにヤワじゃない」
ギーツが静かに問うた。
「おまえはナヤカのことを知ってるんだな?」
「おうよ。そもそも、ケチのつき始めがあの女だ。目をつけてたのに、いつまで経っても部屋から出てこねえわ、ちょいと気に食わないやつを小突いてたら、その間にてめえみてえなニヤケ野郎について行っちまうわ。ロクなモンじゃねえ」
吐き捨てるように言ってから、ドロスは唐突に声の調子を変えた。
「でもなあ、可愛いよなあ。麗しいよなあ。噂を聞いてよお、どうしても我慢できなくて、高え金払って探らせて、肖像画を描かせたのよ。以来、あの娘のことを思わねえ日はなかったぜ」
ドロスがまた、声の調子を変えた。
「それを奪いやがって! そこのカス以上にてめえは許せねえ!」
ギーツが苦笑を浮かべた。
「身勝手なことだな。だが、それならなぜ、グナエグにナヤカを襲わせた?」
「おいおい。ありゃあ、おれじゃねえぜ。オレ様が悪党でも、やってねえことまでは引き受けられねえな」
「あれはやはり、私怨か…。ケリをつける前に聞いておいてやろう。おまえがそこまで魔王に執着する理由は何だ?」
「何言ってやがる?」
「大がかり過ぎるって言ってるのさ。まさか、おれたち四人を潰すためだけに他の連中を抱き込んだわけじゃあるまい。自ら悪党を名乗るおまえの、魔王になるための答えも聞いておきたいしな」
口の端を大きく上げてドロスが笑った。