4-3 反吐が出る
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「和解したと聞いたがな」
ギーツは静かに歩を進めながらアルへと近寄った。アルもまたドロスに視線を定めながら後ずさり、ギーツと合流した。
ドロスが一声笑った。
「何を甘えこと言ってやがる。表で手を握ってるから、裏から簡単に刺せるんじゃねえか。あからさまに敵意を向けるやつは、俺に言わせればバカなのよ」
「なるほど、もっともだ。―反吐が出るがな」
ギーツが凄みを浮かべた。
「…ドロス、どうしてこんなことを…」
見上げるアルにドロスは険しい眼差しを向けた。
「てめえみてえなカスが目の前をウロチョロすんのが気に入らねえんだよ。何の能力もねえくせに言うことだけは一人前でよ。見てるだけでイラつくぜ」
「その程度の…、理由で…」
アルは言葉を失っていた。ドロスの並べた理由とこれまでの出来事の落差がアルを打ちのめしていた。
「何だ、そのツラぁ? お気に召さねえか? どうしてもって言うならなあ。てめえがおれに恥をかかせたからだよ」
「謝罪したのはおまえだよな?」
ギーツに対してドロスが視線を振った。
「だからどうしたっ! てめえらみてえなおめでたいやつらならいいがなあ。繊細なオレ様は、ああいう恥が心の棘になっていつまでも疼くんだよ! 恥ぃかかせたやつを潰すまで消えねえのよ」
「正式な儀礼までしてくれたのに…」
「本気にすんじゃねえっ! オレ様は統主の息子だぞっ!? てめえみてえなカスに、何でオレ様が謝らねえといけねえんだっ! 油断させといて寝首掻いてやろうと思ったのに、てめえの調制士が邪魔しやがった。用心深えアマだぜ、まったく。潰しやすそうなところから最初に潰しとこうかと思や、しぶとく生き残りやがるしよ。まあ、今頃は泣き叫んでるかもな」