4-1 ドロスの登場
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
倒したゲフィラ・オルの傍でアルが思案していると声をかける者があった。
「何事かと思えば、アルではないか」
アルが顔を向けると求法院の制服姿をしたドロスがいた。木の間から抜け出ると足音も重く近づいた。調制士の姿はない。名を呼ぶと大仰に驚いた声をあげた。
「これは、ゲフィラ・オル!? なぜ、このような魔獣がこんな場所に!?」
「それは…」
アルが事の成り行きを説明するとドロスは渋面を作った。
「それはまた難儀なことだな。こんな凶獣を相手に無事で済んでよかったではないか」
「そうなんだけど…。これ、放っといてもいいのかな?」
「いいも悪いもなかろう? 胞奇子といえど一人で処分などできはせんぞ? 求法院に報告するしかあるまい」
「やっぱり、それが一番か…。そういえば、ドロスはどうしてここに?」
「おれか? おれは調制の合間の息抜きだ。おれの調制士は小うるさくてな。許しをもらって森を歩いていたところだ。途中、騒ぎを聞きつけた」
「そうなんだ」
アルは小さく笑った。ファルネアの姿とドロスの話とのギャップがおかしかった。
「そんなことよりも、早くこの場は離れた方がよかろう。報告ならおれもつき合う」
周囲を警戒したかのように首を振り向けるドロスにアルは礼を言った。ドロスに声をかけると森から抜ける道筋を辿り始めた。ドロスも後に続いた。