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3-33 生贄
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
森の中に忍び笑いと囁き声が満ちた。中心には独り立つナヤカがいた。
さも可笑しそうな女性種の声が一際高く響いた。
「生贄だわ」
「その通りだ」
「かわいそうに」「かわいそうに」「かわいそうに」「かわいそうに」「かわいそうに」
男女の入り混じった憐憫の声が折り重なって響く。
ナヤカはかすかに顔を俯けたまま動かない。
「胞奇子に見捨てられるなんて」
「それだけで死んでしまいたくなるような出来事ね」
「だが、事実だ」
「そう。目の前にある現実だ」
「どう料理するの?」
「一息に八つ裂きか?」
「生きたまま嬲るというのもいいが…」
「本来の目的を忘れるなっ!」
口々に囁かれる言葉を一つの声が制した。
森に沈黙が落ちた。