3-31 大漁ですね
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
道の前後を塞ぐように複数の人間が出現していた。左右に立ち並ぶ木の陰からも人が現れる。遥か高みの樹上にさえ人はいた。現存する全ての胞奇子と調制士が集まったかのような異様な光景が展開していた。
「何だ、こりゃあ?」
ギーツは困惑を口にした後、言葉を失った。
「大漁ですね」
「だから、悪かったって」
ナヤカのブラックジョークで余裕を取り戻したものの、表情の緊迫感は拭えなかった。
「ギーツ」
「何だ?」
「ここはおまかせを」
ナヤカの言葉にギーツは眉をひそめた。強大な力を有するナヤカでも、これだけの数の胞奇子と調制士を相手にして無事に済むとは思えなかった。
「いくら何でも無茶だろ?」
「対多戦闘はわたくしの方が得意です。それに―」
「?」
ナヤカが顔を振り向けた。
「―お約束なさったのでしょう?」
ナヤカはかすかに笑んでいた。そこには気負いの影も、悲壮の欠片もありはしなかった。口の端でギーツは笑った。
「すまんな」
「いいえ」
答えるナヤカの声はどこか楽しげだった。ギーツは周囲に気を配りながら言った。