3-30 怒ったナヤカ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
森の中に入ったナヤカは、早い段階で道をやって来る人影に気づいた。
ギーツだった。名を呼んだ。
「リアはどうした?」
建物に通じる道の一つで二人は対面していた。敢えて迂回し、建物同士をつなぐ道筋を辿ったナヤカの配慮が功を奏していた。ギーツの制服にはいくつかの戦闘の跡が伺えたが、大きな損傷はない。
ギーツの様子を伺っていたナヤカは一つの場所に目を留めた。右脚に少し深い傷がある。
「その傷は?」
「さっき襲われた時、やられただけだ。大した傷じゃない。それより、リアは?」
「森の入り口で敵の一人と闘っています。二人がかりなど自尊心が許さないと」
「あのお嬢様らしいな。なら、おれたちはこっちだ」
口元を緩ませたギーツは元々向かっていた方向へ駆け出した。アルがいるはずの廃墟へ続く道筋だ。ナヤカも続いた。
「アルの救出に向かうのですね?」
「助けると約束したからな」
「なぜ、別々に行動を?」
「すまん。エサをまいた」
「集まり様が予想を上回ったようですね」
「そう皮肉るなよ。怒ってるか?」
「少々」
「すまん」
二人は言葉のやり取りをやめ、すぐに立ち止まった。周囲に渦巻く敵意を共に感じ取っていた。