3-26 デラン・ギルマーク
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ヴァン・キ・ラーゴが魔力の注入に呼応して力を振り絞る。踏みしめる力の増大は足下の地面の陥没となって現れた。ヴァン・キ・ラーゴの腕と男の髪の毛の震えが激しさを増した。男が口の端を上げて笑い、残った髪の毛がざわめきを示して広がった。
リアは全身に熱を感じ始めていた。火照りが広がり、首筋から這い登って頬を撫でる。体中に相成斑が現れているはずだった。
以前に一度、魔力を上げた姿を鏡に映して見たことがある。何も隠すもののない腕や脚、腰や胸から顔にまで全身に紅い紋様が浮かび上がっていた。まるで身体にまとわりつきながら燃え盛る炎のようだとリアは思った。
全身にみなぎる魔力と突き上げる高揚感の中、リアは言った。
「名を聞いておいてあげるわ」
「デラン・ギルマーク!」
男、デランが叫び、髪の毛のざわめきが増した。デランの顔には細くうねった灰色の相成斑が現れていた。残りの髪の毛がリアに迫った。
リアは残る一つの髪飾りを投げた。髪飾りは空中でヴァン・キ・ラーゴを生成しつつ、髪の毛の側面に回り込むと剣の突き出た腕を振るった。
リアは目を見張った。
剣に切断されるはずの髪の毛は健在だった。剣を受け止めてたわみ、接触した場所を基点にして方向を変えるとヴァン・キ・ラーゴに絡みついた。髪に絡め取られたヴァン・キ・ラーゴは、次の瞬間には森に放り込まれていた。衝撃音と木の破壊される音がした。大樹が森の外に倒れ込み、地を揺るがした。