3-24 金色に変わる髪の毛
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「部屋であたしを襲ったのもアンタね?」
「分かるか?」
リアが問うと男は至極簡単に認めた。
「手すりに髪の毛が残ってたわよ」
「逃走経路だからな。残るのも承知の上だ。色もわざわざ選んだ」
男が言うのと同時に髪の毛が金色へと変化し始めた。わずかの間にヴァン・キ・ラーゴに巻きついた髪まで変わった。ギーツの髪とクセも色も全く同じだった。男の髪の色はすぐに元に戻った。
―こいつ。
念の入ったことだとリアは思った。この男は自分の仕業だとバレないように髪の色を変え、疑いがギーツにかかるように仕向けたのだ。単純な計略にはまった浅慮が悔やまれる。
「あたしを襲ったのはドロスの指示?」
「それもある」
苦々しい思いでリアが言うと男は肯定した。
「だが、何よりもおれがおまえに興味があったからだ」
リアは顔をしかめた。男の下卑た笑い、目の色、声から伝わる感触、全てが気に食わなかった。
「どうせ始末するなら楽しませてもらってからと思ってな」
会話の最中もヴァン・キ・ラーゴと男の髪の毛の格闘は続いていた。ヴァン・キ・ラーゴが巻きついた髪をもう一方の腕で掴んで対抗しているのに、男は余裕の表情だ。
リアは、いつでも次のヴァン・キ・ラーゴを招喚できるよう集中していた。