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魔王になるには?  作者: 水原慎
第一章 邂逅
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2-6 二枚の扉

長文なので分割してアップしてあります。

枝番のあるものは一つの文章です。

サブタイトルは便宜上付与しました。

 二人がサインをし終えると紙を受け取った文礼員は奥へと姿を消した。しばらくの後に部屋から出てきた文礼員は大きめの鍵束を携えていた。

「こちらへ」

 文礼員は窓口の向かいにある木製の扉を指し示した。二人は後ろに倣って扉まで歩いた。

 縦に木目の走った一枚ものの扉は上方が丸かった。幅が広く高さもある。ドロスのような人物でも通れるだけの余裕があった。二人を導く文礼員は束になった鍵の一つを使って扉を開けた。リアたちが待っている間にも一度閉じられた鍵だ。管理の厳格さを示していた。

 内側に開いた扉の向こう側は小さな空間になっていた。扉の枠から入り込む光では床が石でできていることと扉の幅程度のスペースが確保されていることぐらいしか分からない。先は暗がりで見通せなかった。

 二人が中を窺っていると文礼員が体の前で手を振り、手首から先を使って何かを払うような仕草をした。文礼員の所作と同時に壁の両側に灯が燈る。魔族が好んで使う相転儀を込めた灯りだった。透明な結晶体の中に閉じ込められた火は光を発しながらも周囲を焦がさず、有害なガスも発生させない。使用する者の魔力によって操作が可能で、結晶体を破壊しない限り半永久的に駆動する。文礼員の動作は灯を作動させるためのものだ。動作を伴うやり方は意識の集中よりも稼動が容易だった。扉の先は下に続く階段になっていた。

 二人に声をかけ、文礼員が階段を降り始めた。アルとリアは文礼員を先導にして石積みの階段を進んだ。儀典堂は地下にあるようだった。調制士に対する事前のレクチャーでは、儀式の内容は教えても所在は教えない。

 折り返しになった階段を進み、文礼員と二人は開けた場所に降り立った。

 階段の終着点は通路になっていた。進んできた階段は人が通るのに十分な幅があったが、さらに余裕のある造りのために唐突に開けた印象があった。両脇の壁には階段と同じく灯火が並んでいた。最初の文礼員の操作に反応したのか灯が燈っており、通路をほの暗く照らし出していた。

 通路の先に扉があった。巨大な両開きの扉だ。文礼員に促され、二人は扉までの短い距離を歩いた。

 二人は文礼員に導かれて扉の前に立った。荘重な紋様を刻んだ金属製の扉は人の背丈の三倍はあった。文礼員が鍵を差し込んで回すと音が重々しく響いた。

「わたくしどもが付き添うのはここまでです。儀式を終えられたらお知らせください」

 リアが礼を言うと文礼員は一礼して通路を戻っていった。

 文礼員の背中を見送り、姿が見えなくなってからリアは扉に向き直った。片方の扉に手を当てて静かに押し開く。扉は思ったよりも軽く、女性種のリアにも動かせる。見た目相応に重みはあるため、リアは開く動きに合わせて中に入った。

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