3-21 首に巻きついた物
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
救出に向かっていたリアの首に、突如、何かが巻きついたのは森に近づいた時だった。
「!?」
先を急いでいたリアは不意を突かれた。ナヤカがいなければ、危うかったかもしれない。
「リアっ!?」
ナヤカが異変に気づいた時には、リアは上空に引き上げられていた。ナヤカが黒い球体を放った。
「―!」
唐突に首筋にかかる圧迫感が消失した。リアは高みからの落下をどうにか持ちこたえた。全身のばねを使って落下の衝撃を殺すと地面に手をつき、咳き込んだ。
「大丈夫ですか、リア?」
「…ありがとう」
「いいえ」
緊張感とともにナヤカが周囲を見回す。リアを襲った正体不明の何かはナヤカの相転儀が切断していた。それは、あらかじめ髪飾りを取り去っていたリアの髪にも絡みついていた。リアは立ち上がると首筋に手をやり、引き剥がした。指に幾本もの細い糸状の物がまとわりついて見えた。
髪の毛?
リアの手が引き剥がしたのは、灰色をした縮れた人の髪だった。
足音がした。
顔を上げると森の入り口に一人の男性種が立っていた。
大きく波打つ長い髪が目につく男だった。髪の色は黒く濁った灰色だ。数条の髪がほつれて肩口にかかっている。身にまとっているのは求法院の制服だった。
引き絞ったような長身に長い手足をしていた。尖った顎の骨の線がひどく目立つ。高い鼻の上で黒光りする細い目が笑っていた。